精密治療〜歯髄温存療法(VitalPulpTherapy)&MTAセメント〜
2022.01.20
かいり歯科クリニックの歯科医師の戸田です。
今回は当院で行っている“精密治療”のカテゴリーの中の『歯髄温存治療(Vital Pulp Therapy)』についてご紹介させて頂きます。
歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy)とは
先日、当ブログ内の〜保険と自由診療の根管治療の違い〜の中でも記載させて頂きましたが、歯の中には歯の根(歯根)の先から歯の根の管(根管)を通じて入り込んでいる“歯髄”と呼ばれる、神経や血管などから構成されている大切な組織があります。
歯髄の役割を下記に列挙すると
・歯に栄養を与える
・歯のほとんどの構成を占める象牙質という組織の形成
・食べ物や飲み物などの温度を感じるセンサー
・強く噛む力に対するセンサーと防御機構
・細菌感染に対する免疫機構
など、歯の寿命にとって非常に多くの大切な役割がございます。
この歯髄に細菌感染すると、歯髄自体を取り除かなければなりません。
歯髄を失うと、上記役割をすべて果たせなくなるだけでなく、歯髄を取り除いた歯は、根の先に病変が生じたり、歯質が健全な歯と比べて大きく失われているため歯根破折リスクが高く、相対的に歯を失うリスクも高くなります。
つまり
歯髄の有無が歯の寿命に大きくかかわるという事です。
『歯髄温存治療(Vital Pulp Therapy)』とは、深い虫歯や外傷などで歯髄が露出してしまった場合に、歯髄を保護して神経を残す治療法です。
では、いかなる歯髄の露出ケースでも『歯髄温存療法』が適応ができ、歯髄を保護できるかというとなかなか難しいのが現状です。
なぜなら歯髄のダメージが大きいとその機能を失ってしまいます。
実はこのダメージを受けた歯髄の状態によって歯髄温存療法の適応を見極めるのですが、その歯髄の診査・診断がとても難しいのです。
そのため最初から抜髄(神経を取る処置)を選択する歯科医院も多いのが現状です。。
適応かどうかは
歯の痛みの既往の確認、レントゲン撮影、冷温刺激、歯の神経の電気刺激検査
などで診断します。
きちんとした診査・診断をした上で、患者様に説明しリスクの同意も得たうえではじめて『歯髄温存療法』を適応します。
歯髄温存療法=VPTの特徴
ポイント①『治療時の感染を防ぐラバーダム防湿
『ラバーダム防湿』とは、ゴムのシートを用いて治療する歯を唾液や舌、頬の粘膜から隔離する方法です。
精密治療では、ゴムのシートを対象歯にのみかけ、唾液内の細菌の侵入を完全シャットアウトして行います。
治療を成功させるポイントは正確な診断と感染のコントロールで、ラバーダム防湿は感染防御の第一歩です。
治療中や治療後に唾液が入ると二次感染を起こし、現状が重篤化してしまう可能性があるため『ラバーダム防湿』は必須です。
ポイント②『拡大鏡やマイクロスコープの使用
“拡大鏡やマイクロスコープ”を使用することで肉眼と比較して約24倍程度まで視野を明るく拡大でき、より精密な治療が可能となります。
非常な複雑な歯の構造の中で、肉眼では見えないところを見えるようにすることで感染した歯質を徹底的に除去することが可能となり、精度の要求される歯髄温存療法において、格段に成功率を上げる事ができます。
ポイント③『感染歯質の慎重な除去』
“う蝕(虫歯)検知液”という感染した歯質のみを選択的に染める薬液を使用することで、
「どこを削り、どこを残すべきか」を見える化することで、感染歯質のみを選択的に除去します。
また歯髄に近い感染歯質に関しては、低速極小ドリルやマイクロスコープ用の専用器具を用いて健全な歯質は削らないように慎重かつ徹底的に除去します。
ポイント④『バイオセラミックセメント(MTAセメント)』
MTAセメントは、1998年にアメリカで発売開始した製品名称で、それを改変した商品群をバイオセラミックセメントと呼びます。
歯髄に近接している場合や露出した歯髄を保護する際に使用します。
【 バイオセラミック(MTAセメント)の特徴】
高い殺菌作用
生体親和性と硬組織誘導能(歯や骨などの再生)
高い封鎖性
少々難しい内容を記載しましたが、一番お伝えしたいことは
歯の寿命を伸ばす(縮めない)治療 ⇨ 歯髄を温存する治療 ⇨ 歯を削らない(治療の必要のない)状態にすること ⇨ 虫歯菌・歯周病菌に感染させないこと ⇨ 虫歯・歯周病予防 ⇨ ☆治療より予防が大切☆
です!
今年も、患者様により『安心・安全な治療』かつ『歯の寿命を伸ばす(縮めない)医療』をご提案できるように、スタッフ一同努力研鑽して参りたいと思います。
歯にお困りの方は、予約が少々取りづらくご不便、ご迷惑をおかけするかとは思いますが、お気軽にご相談頂ければ幸いです。